しぶしぶ付き合うことにした
”食べものもあるしお酒もあるし、一度ゆっくり話したかったの”
一番可愛くない娘が嬉しそうに囁いた
やけくそ半分で笑顔を見せる自分が情けない
常連客との付き合いも大切だと割り切り楽しもうと思った
当時パブとよばれたその店は
最新のカラオケシステムが売りの
踊れるホールとボックス席で活気に溢れていた
8トラのエンドレステープだよ!
レコードもあったし
でもPAシステムはご機嫌で
JBLのスピーカーが本領発揮するボリュームだった
マイクだけ安物でがっかりだったけど
飲めない酒を喉に流し込み
ピザとポテトで空腹を満たした
これ歌って!あれ歌って!
のリクエストも適当にこなしつつ任務完了
三人は同じ病院で働く看護婦さんだった
ここぞとばかりに帽子をとって傷を見せた
事情を話すとみんな沈黙?
とりあえず処置してもらえることになった
優しい気持ちに感謝
世の中悪いことばかりじゃない
なんだか楽しくなってきて
傷の痛みも和らぎ
グルグル回る景色の中でタクシーへ
飲み過ぎたかも?
走り出してすぐ気分が悪くなってきた
帰り着くまでに三回も吐いた
ピザの匂いがした
ポテトが出てきた
キュウリも出てきた
額から血も出てきた
”お客さん!大丈夫?”と運転手
”いける!いける!”
”おつりはいらんよ!”
開いたドアから降りた瞬間
地面に顔から落ちた
つづく
text by tatsuo 70' memory
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